家紋じゃなくても大丈夫? 着物の紋と格について

投稿日:2021年04月13日

家紋じゃなくても大丈夫? 着物の紋と格について

着物の格は、紋の有無やつける紋の数で大きく変わります。紋は着物の格を決める、大事なポイントなのです。紋の種類や数による格の違いなど、紋の基本を知っておきましょう。着物をレンタルする場合、自分の家紋ではない着物を着ても問題はないのか?など、紋に関する疑問にもお答えします。

着物の紋とは?

紋は、着物につける技法で分けると「染め抜き紋」「刷込み紋」「刺繍紋」の3種類があります。「染め抜き紋」には、紋の表し方によって「日向紋(陽紋・表紋)」「陰紋」「輪無し紋」があります。すべての紋の中で一番格が高いのは「染め抜き日向紋」です。留袖や色無地、訪問着など格の高い着物は、最初に染める際に紋がつく部分を白く染め残しておくのが一般的です。

その他の紋の格はおおむね以下のようになっています。

染め抜き紋・日向紋(陽紋・表紋)

紋を白抜きで表す。丸がある場合、女性は丸を外しても良い。(正礼装)

染め抜き紋・中陰紋

陰紋の輪郭を陰紋より太めにしたもの。日向紋が大げさ過ぎる場合に用いる。日向紋と陰紋の中間の格付け。(準礼装・略礼装)

染め抜き紋・陰紋

紋の輪郭だけを白で表す。(準礼装・略礼装)

刷込み紋・日向紋/陰紋/輪無し紋

着物の地色が淡い場合の技法。型紙を当てて色を刷込む。染め抜き紋より格が下がる。(準礼装・略礼装)

刺繍紋・日向紋/陰紋/輪無し紋

刺繍で紋を表したもの。染め抜き紋、刷込み紋より格が下がり、一つ紋に用いる。(略礼装・洒落紋)

その他・加賀紋

多色を使って彩色した紋。家紋ではなく、草花などを自由に描く。(洒落紋)

その他・伊達紋

家紋だけでなく絵や文字を配したデザイン性の高い紋。(洒落紋)

紋の種類

現在、日本には2万種を超える家紋が存在するとされています。その中の約4000種類ほどが、「平安紋鑑」に収められています。家紋のルーツは平安時代の公家や貴族が、独自の紋を牛車の胴につけて目印にしたことに始まると言われています。家紋には公式な家紋「本紋」(または定紋、正紋)の他に、女性が使う「女紋」や、副次的に使う「替紋」などがあります。

紋の格とは?

着物には、「背縫い」「両胸」「後袖」と5カ所紋所(紋を入れる場所)があります。紋を入れる数が多いほど、着物の格が高くなります。

五つ紋

背縫い1カ所、両胸、両後袖に紋が入る、最も格の高い正礼装用の紋付き。染め抜き日向紋を用いる。色留袖に五つ紋を入れると、礼装と同格になる。

三つ紋

背縫い1カ所と両胸に紋を入れる。訪問着、色無地に入れると準礼装用。中陰紋の三つ紋は、日向紋の一つ紋より格上になる。

一つ紋

背縫い1カ所に紋を入れる。準礼装や略礼装用。刺繍で入れることもあり、洒落紋は一つ紋で入れる。

自分の家紋ではない着物を着ても問題無い?

家紋は本来氏族や血統を表すものでしたが、江戸時代に一般庶民が家紋を使うようになると、特定の氏族だけで独占することのできない家紋が出てきました。それらの紋を「通紋(つうもん・とおしもん)」と言います。通紋はいわば「誰でも使える紋」のこと。
中でも「蔦」、「蝶」、「五三の桐」などは広く通紋として知られており、自分の家紋でなくとも着ることに問題はありません。レンタル衣装にはこうした通紋が用いられます。

フォーマルな場所で着用する着物を選ぶ際は上記を参考に、着て行く席にふさわしい格の紋を選んでください。

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