着物の染めの種類と特徴

投稿日:2019年07月26日

着物の染めの種類と特徴

着物には織りと染めがあります。織りに比べて染めの着物は、図柄も多様で華やか。格の高いハレの着物には、染の着物が多く見られます。染めには手書きや型染めなど、さまざまな技法が使われています。ここでは染めの種類と技法をご紹介します。

着物染めの種類

着物の染めの3種類をご紹介します。

手書き

手書き染めは、文字通り柄を手で描き出す染めの技法です。筆を使って白生地に下絵を描き、隣り合った色が混ざらないよう糊を置いて防染してから、刷毛で色を入れて染めます。手書き染めの中でもロウケツ染めの場合は、ロウで図柄を書いて防染する抜き染めになります。手書き染めの代表的なものとしては「友禅染め」があります。職人の高い技術が必要とされるため、手書き染めの着物は高価です。

型染め

渋紙などを切り抜いた型紙を使って、生地に細かな模様をつけるのが型染めです。型染めの代表的なものには「小紋」があります。小紋はごく小さな柄を生地全体につける染め技法で、柄が細かいほど格が高く、礼装にも用いられます。型染めには型を使って染料を入れるやり方と、型で糊を置いて防染して染めるやり方があります。「紅型」のように、複数の型紙を使って多色刷りする華やかな型染めもあります。

絞り染め

絞り染めは古くからある技法です。白生地を糸で縛ったりクリップでつまんだりして、染料が入りこまないよう防染してから、染料に漬けこみます。生地全体を細かく絞ったものを総絞りと言います。総絞りは生地を多く使うので着物にすると高価なものになります。絞り染めは華やかで伸縮性もあるため、帯揚げや髪飾りなどの小物にも使われます。絞り染めの代表的なものとしては「鹿の子絞り」があります。

代表的な染め方

友禅染めなど着物の染色技法として代表的なものをご紹介します。

友禅染め

日本の着物の染色技法として代表的なのが友禅染めです。友禅染めの名称は江戸時代に京都の扇絵師・宮崎友禅斉に由来します。友禅染めは、防染剤(伏せ糊)を置くことで多彩な色を使い複雑な模様を描き出すことを可能にしました。京都の友禅染めを京友禅といい、意匠化された植物や事物を描き出す華やかな「友禅模様」を特徴とします。京友禅では金箔や刺繍を合わせる技法も多く使われます。京友禅の他に、写実的な絵柄と加賀五彩(臙脂・黄土・古代紫・草緑・藍)を使うのが特徴の加賀友禅、渋目で粋な江戸友禅(東京友禅)などがあります。

ぼかし染め

色彩がグラデーションを描くぼかし染めは、着物に柔らかな華やぎを加えます。ぼかし染めには、白生地の反物の両端を引っ張って刷毛で染料を塗ってゆく「引き染め」の技法が使われます。刷毛で染料を入れるときに淡色から塗り始め、色の境界線を水でにじませながら濃い色を重ねてぼかし模様を作っていきます。ぼかしには、自然ぼかし、縦ぼかし、遠山ぼかし、雪輪ぼかし、遠山ぼかしなど、表現方法が数多くあります。

辻が花染め

辻が花は室町~安土桃山時代に現れた絞り染めの技法です。縫い締め絞りや竹皮絞りなど複雑で高度な技法を使った多色染めで、絞りの上に手書きや刺繍、金箔などで装飾を加えることも行われます。室町末期から江戸初期には一世を風靡した辻が花染めですが、友禅染めが普及するにつれ、手間のかかる辻が花染めは急激に衰退。技術が途絶えたことから、幻の染物と呼ばれました。その後昭和時60年代に、辻が花研究家である友禅師・久保田一竹が科学染料を使った技法で辻が花染めの再現に成功しています。

江戸小紋

渋紙(柿渋を塗った和紙)を使って生地全体に細かな模様を染める小紋。数ある小紋の中でも江戸小紋は、少し離れると無地に見えるほど細かな柄を単色で染めるのが特徴です。江戸小紋は武家文化の栄えた江戸で、裃(裃)に使われる染めとして発達したため、落ち着いた色合いと上品な幾何学柄が特徴的です。江戸小紋の代表的な柄には、鮫、行儀、あられ、通しなどがあります。

染めの種類や特徴を知ると、着物を選ぶ楽しみが増えます。着物を選ぶときは上記を参考にしてみてください。

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