既婚者でも振袖の着物を着用しても良いの?

投稿日:2019年08月03日

既婚者でも振袖の着物を着用しても良いの?

振袖といえば、どこを見ても「未婚女性の第一礼装(正装)」と書かれています。ところが近年既婚者が、結婚式や披露宴のパーティーへ振袖を着て行く姿も見受けられます。既婚女性が振袖を着てお出かけするのは、本当にタブーなのでしょうか? そもそも、どうして振袖が未婚女性だけのものと決められているのでしょう? ここでは振袖にまつわる歴史と、今の振袖事情をご紹介します。

そもそも振袖って? 

現代では、振袖は未婚女性だけが着る正装とされていますが、歴史を遡ると「振袖」は未婚・既婚で区別される衣装ではありません。振袖の元になったのは、子供が着る「振り八つ口(袖の身頃側を縫わずに開けておく)の小袖」だと言われています。子供の着物というだけで男女の区別もありません。井原西鶴の『西鶴俗つれづれ』(元禄8年)によると、「男子17歳の春、女子19歳の秋に袖を短くすると同時に脇をふさいだ」とあります。つまり江戸初期まで振袖は、男も女も着た着物だったのです。

既婚者が振袖を着てはいけないといわれている理由は?

振袖が今のように若い女性の正装になったのは江戸時代。元禄の頃から若い女性の着物の袖丈がどんどん長くなり、振袖=若い女性の正装という認識ができました。袖丈が長くなった理由は、「踊りを習う娘が増えた」など諸説ありますが、中の1つに「袖が意思表示の道具に使われた」ということがあります。女性がはっきりものを言うのははしたないと思われた時代、袖をゆっくり振れば「気がある」、サッサと振れば「気がない、嫌」という意味になります。今でも「振った、振られた」とか「袖にする(邪険にする)」という言い方が残っていますが、袖は求愛に応えるツールだったのです。既婚者はすでに結婚している訳ですから、求愛を受けることすらとんでもない、袖を切ることは、誘いなどに目もくれないという貞淑の証だったのです。

最近の既婚者の振袖事情は?

最近は、「場が華やかになる」「柄が明るくて好みに合う」などという理由で、既婚者でも20代の若い女性が振袖を着て結婚式や披露宴に行くケースが増えてきました。結婚式自体、レストランウェディングや手作りパーティー婚などと多様化している中で、振袖=未婚女性だけが着るというルールだけ絶対視されるのも、考えれば不思議なことです。歴史をさかのぼれば振袖は未婚・既婚に関わらないどころか、男女どちらも着たものなのですから、周囲に迷惑をかけない限り、未婚の40代50代が披露宴に振袖で参会しても、成人式の時点で既婚の女性が式典に振袖を着ても、問題だとはいえないでしょう。

既婚者が振袖で結婚式へ行くときの注意点

とはいえ既婚者が振袖を着ることに疑問を感じる人は、まだたくさんいます。特に年配者の多い改まった席など、場合によっては既婚者の振袖がタブーとされることもあります。結婚式や披露宴に着て行くときは、招待してくれた人に「気にしないかどうか」を確認してから行く方が良いかもしれません。

既婚者でも振袖を着ることは、絶対的タブーではありません。通常のパーティーやお祝いの会では華やかに装うのもマナーです。招待する方がOKならば、振袖を楽しんで着てくださいね。

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