この模様はどの時期に着れば良い? 着物の柄と季節の関係性

投稿日:2021年08月21日

この模様はどの時期に着れば良い? 着物の柄と季節の関係性

日本人は、季節の移り変わりをとても大切にします。着物にも季節ごとの絵柄や模様がたくさんあり、「この季節にはこの柄」と時候と着物を合わせて装うのは、四季のある国ならではの楽しみです。季節と柄や模様との組み合わせ方を知ると、着物の楽しみ方がいっそう深まります。今回は、着物の柄と季節の関係性についてご説明します。

着物の柄を選ぶときの前提

着物の柄に季節感を盛り込む際は、「季節を先取り」して柄を選ぶことが大事です。
立春の声を聞いたら春の花柄を選び、初夏にはいち早く涼やかな夏の模様を選ぶのが粋とされています。では、どのくらい先取りしたら良いのでしょうか。季節と柄の合わせ方は、着物のプロでも人によって意見が違います。決まったルールはありませんので、厳格に考えすぎずに着物を楽しみましょう。
基本としては、「季節から遅れないこと」、もしくは「盛りを過ぎないこと」を目安に考えます。初夏の柄とされる藤の花柄であれば、花が咲く頃までが粋に着られる時期、花が散る頃になっても着ているのは「盛りを過ぎた」感じになります。

季節別! おすすめの着物の柄

一般的に「四季」は、春分(3月)、夏至(6月)、秋分(9月)、冬至(12月)を中心に前後3ヶ月を春、夏、秋、冬と分けますが、和の世界では歳時記に準じてこれに新春(正月)を加え、1年を5つの季節に分けます。具体的には、1月は新春(正月)、2~4月は春、5~7月は夏、8~10月は秋、11~12月は冬になります。

1月(新春、正月)におすすめの着物の柄

1月は気候的には冬になりますが、年が明けためでたさから新春、初春と呼んで、春の花柄を使うことができます。おすすめは、梅、桃など。

春におすすめの着物の柄

明るめの淡い色合いの地色が春らしく、季節感が出ます。おすすめは、梅、桃、椿、遠州椿、桜、牡丹、若竹など。

夏におすすめの着物の柄

晩春~初夏は時期に先んじて季節の花を選ぶのが粋です。藤や菖蒲など、開花前にキリリと着こなしてください。朝顔は本来秋の花なのですが、7月に咲くことが多く浴衣にも描かれるため、夏柄として選ぶことができます。おすすめは、藤、菖蒲、紫陽花、朝顔など。

気温が高くなってきたら、涼感のある流水や鮎などを選びましょう。盛夏の遊びとして雪輪やアラレ柄などで「冷たさ」を表す柄選びもあります。おすすめは、笹、青楓、流水、柳、鮎、千鳥、磯波など。

秋におすすめの着物の柄

秋の着物は、辛子色や葡萄色などしっとりしたニュアンスカラーの地色が季節に似合います。柄は秋の七草に代表される花柄や、紅葉が定番で人気です。おすすめは、菊、紅葉、萩、桔梗、撫子、すすきなど。

冬におすすめの着物の柄

冬はパーティーなどフォーマルな席が多いので、実際は吉祥柄などを選ぶことが多くなります。冬ならではの装いをする機会では鈍色(にびいろ、濃い灰色)の地色で渋めに装うか、思い切った濃色でインパクトのある装いをすると、着慣れた印象で素敵です。おすすめは、まんじゅう菊、南天、雪椿、松など。

季節を問わない定番の柄


季節別におすすめの柄を紹介しましたが、着物には季節を問わず一年を通して着ることができる定番の柄があります。季節にあった柄を持っていない場合などは、以下の柄を選ぶと良いでしょう。

桜は日本では特別な花なので、訪問着や振袖柄などでは季節を問わず使うことができます。桜と菊、桜と紅葉をなど、春秋の花を組み合わせた柄も季節を選びません。

四君子

蘭、竹、菊、梅を組み合わせた柄を「四君子」と言います。四君子は、気品や曲がらない高潔さ、高貴さ、強さなど君子の特性を表現していると言われる文様。「蘭(春)・竹(夏)・菊(秋)・梅(冬)」という風に柄に四季が入っているので、通年着ることができます。

吉祥柄

吉祥柄は、縁起の良いとされる植物や動物を図案化したもので、おめでたい席に用いられる文様です。長寿、富貴、成功、夫婦円満、健康など祝いの場によって選ばれる柄が多少変わります。
長寿は鶴、亀、松竹梅、菊水など。夫婦円満や祝婚は、鴛鴦、貝合わせ、御所車など。富貴、繁栄は扇、熨斗目、打出の小槌など。出世、武運は、鷹、鯉、竜、兜など。健康は、麻の葉(お子様の健康)など。

有職文様

有職文様は平安時代以降、公家の調度などに使われてきた伝統的文様です。多くは大陸伝来の格調高い文様です。幾何学文や連続柄も多いので地紋や織柄としても使われ、日本の文様の基本になっています。代表的な有職文様は、七宝、亀甲、唐草、立涌、幸菱、小葵、雲鶴など。

知れば楽しい文様の世界、上記を参考にお出かけに合わせて着物の柄を選んでみてはいかがでしょうか。

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